【空に咲くひとひらの花】最終回 「発達障害」というテーマが提示する根源的課題

これまでのお話:【空に咲くひとひらの花】
 
ご自身が発達障害と向き合う若い頃の過程から、結婚後授かったお子さんの発達障害のご様子を、連載という形で記事にして下さっています。
ノンフィクションです。

 
 
4月から始まった息子の高校生活。最初は順調に思えました。
学校にも慣れた様子で、友達も出来たようです。
 
そんな折、夜、警察から電話があったのは10月のことです。
 
この日は娘の定期試験の勉強に終日付き合っていました。
 
電話の内容は、

「息子がコンビニで万引きした。それを咎めた店員に対し逆ギレし暴れたため、警察に通報があり逮捕となった」
 
今現在は警察で拘留されているとのことです。
 
家内に話すと

「絶対に引き取りに行かない。少年院でもなんでもいけばいい!!」

と泣き崩れました。
 
 
娘に家内の面倒を託し、取り急ぎ警察署に向かいます。
 
 
顔なじみになっている担当の刑事さんに詳しくお話を伺いました。
実際のところ万引きしたのは「おにぎりひとつ」。

逮捕の原因としては万引きそのものではなく、その後の騒動にあったというのです。
 
 
ポイントは二つ。

①逆ギレし、謝るどころか店の人間に抵抗し大暴れしたため、店内のみならず店の前に野次馬が出来るほどの騒ぎになった。

②店側の心象が悪く、既に被害届が出されているため警察としては拘留せざるを得ない。保護観察中なので、ヘタをするとこのまま少年院送致もあり得る。
 
 
まずは、コンビニに謝罪に行き被害届を取り下げてもらう必要があるようです。

実際に被害届を出された店長さんには会えなかったのですが、オーナーとお話することが出来ました。

心からの謝罪と、親バカを承知でこれから将来ある身なので何とか更生の機会を頂きたいと頭を下げました。

オーナーの方曰く、
 
「万引きを発見された時恐らくパニックになり「返せばいいんだろう!」と暴言を吐いたことが店長の感情を逆なでしたのだろう。自分はその場にいなかったし経営者の立場なので、店長次第ではあるが、被害届を取り下げること自体は吝かではない」
 
とのことでした。

オーナーのご厚意により、息子は三日後に釈放されました。
 
 
息子と家内、私の三人で店長の所に謝りにいきました。

中々謝罪を受け入れてもらえず、紆余曲折があったのですが、結果的には
 
・おにぎり一個の重さを理解して欲しい。そういう教育を責任もってご両親が行ってほしい。

・二度と店には近づかないこと。見つけたら即通報する。
 
ことを条件にお許しを得ることが出来ました。
 
 
その後、保護司の先生や知人の方と善後策を相談し息子に以下のことを話しました。
 
・もう一度、警察沙汰になったら親子の縁を切る。その結果、少年院送りになったとしても引き取らない。

・保護司の先生のところへ当面週一回通う事。地元の武道場に週二回通う事。
 
 
前にもお話しましたが、息子は本当に周囲の大人に恵まれました。

保護司の先生にもとてもよくしてもらいましたが、武道場の館長には言葉には尽くせないほど、お世話になり大きな愛情を頂きました。

知人の紹介だったのですが、強面の外見とはうらはらに道場以外でも目を配って頂き、様々なお話を頂戴したようです。

とは言え、どうしてこんなことになったのでしょうか。
やっと軌道に乗り始めた新しい生活を自らの手で壊してしまったのです。しかも「おにぎり一個」と引き換えに。

コンビニで発見された時に、パニックになったのは容易に想像がつきます。何もかもこれでダメになってしまうという絶望感に襲われたのでしょう。
 
 
問題はその前です。

人の物を盗ってはいけない。法律にふれることはしてはならない。

その結果、どのような事が自分に降りかかり、親も含めた周囲(息子のことを気にかけている全ての人達)にどれほど迷惑を失望を与えるかは、前の裁判で学び、痛いほど思い知ったはずです。

自分で自分の可能性を潰しているのだと。

にも関わらず、その瞬間の衝動に負け、先々のことに思いが及ばない。

これは「人として」レベルで深刻な事態です。

弱さ故の自己弁護、衝動に抗えない精神、その都度変わる気分。
どれも想像がつきますし、身に覚えがあります。

気質と発達障害的素養は私からの遺伝だと思います。
しかし息子の年齢の時、ここまでは愚かではなかったような気がします。親の教育が悪いと後ろ指さされても仕方ありません。子育てに何らかの問題があったのです。
 
 
私の反省としては

・中学一年間、野球を含め息子から手を放してしまった。じっくり話すこともなくなり支えになれなかった。
 
家内の反省としては

・野球含め、期待から彼の自信を悉く奪うことをした。もっと自信をつけさせてやるべきだった。
 
 

それを踏まえ私は、
 
・発達障害の影響は本人の責任ではないところもある。改めて専門の病院を探し、対処・治療を仰がないと根本的解決にはならない。

との意見でしたが、家内は反対に

・発達障害のレッテルが彼を傷つけ、自信を失わせたし薬は効果がなかった。もっと愛情をもって長い目で見守るべき。
 
と平行線をたどることになりました。

 
 
男親、女親の差だけではなく、発達障害に対する知識と理解にも差があり同じベクトルで息子に向き合うことが出来ません。
 
 
三日間の警察署での拘留は息子にとって恐怖を植え付けることになり、結果的にその後今現在に至るまで警察沙汰は起こしていません。

また、この事件に関する結審は翌年1月に出たのですが、「不処分」という結果となり保護観察期間の延長もありませんでした。

これは偏に保護司の先生の尽力(事件後の反省している態度、考え方の変化を主張して頂いた)と武道場の館長がたまたま裁判所関係に顔の利く方だったので、そのアドバイスもあってのことだと思います。
 
本当に様々な方々の支えがあり、何とか無事高校は卒業することが出来ました。
 
 
私としては高校卒業後、手にした技術で就職して欲しかったのですが(そもそもそういう職業訓練校的学校を選んだので)、息子の希望とそれを後押しする家内の意見で、就職はせず希望する専門学校に進むことになりました。

そうして入学した専門学校なのですが、結局休学期間を経てやめてしまいました。
現在はアルバイトをしながら「絶賛 自分探し中」です。
 
 
この結果に嘆息するとともに、ふとどこかで聞いた話だと思いました。

【空に咲くひとひらの花】:連載第1回 姉の死 

でご案内した通り、私もまた親の期待を裏切り学校を中退し、不安定な生活を送っていた時期があったのです。

人のことは言えないなぁ(^_^;) と思いつつも、やはり二の舞は踏んで欲しくありません。

警察沙汰はなくなったものの、専門学校入学から今に至るまでそこそこ事件は起こしています。(運転免許とるとる詐欺、奨学金使い込み事件等々)

しかも実家で親がかりで暮らしながら、成人して以降も一見怠惰な生活を送っているように見えます。
 
 
親として願うのはただ一つ。

「幸せになって欲しい」

ということです。この目的をかなえるためには、自立し、自活していく必要があると思うのですが、今の所その兆しが見えません。
 
 
家内の言う「長い目」・・・
 
成人した息子に手を貸すこと自体過保護でないか、過去息子の起こした事件の数々に対するいまだ許し難い思い、加えて自分が抱えていた事を今の息子に見る「近親憎悪」。
 
様々な葛藤があり、まだ息子に対して向き合うことが出来ずにいます。
 
 
私自身は周囲の方々の支えもあり、何とか社会生活を送ることが出来るようになりました。
しかし生まれながらにもっていた「気質」と「素養」で非常に生きづらい思いをしたのも事実です。

ただ、今間違いなく言えるのは、そういったことまたは環境を言い訳にしても自分の可能性を狭めることに他なりません。

何があっても生きている以上、前を向く必要があります。

 
 
私が今まで生きてきた上で学んだことを息子に改めて伝えようと思います。
そしてこちらのサイトで得た知識:毛髪検査からの足りない栄養素の補充、食生活の根本的改善に彼を導きたいと思います。
 
この取り組みに関しては、彼自身の受け入れ時期というものもあるでしょう。
いくら強制しても本人にその気がなければ継続しないような気がします。

その時期を模索しながら、願わくば息子だけではなく他の人にもお伝えしたいと思います。
その機会があれば自分の経験も無駄ではなく、何等か他人様のお役に立てるのでは、と最近思うようになりました。
 
 
今回で記事を掲載させて頂くのは最後となります。私の体験したこと、それを通じた思いに関して一通りお話することが出来たと思います。
 
 
このような機会をいただいたこみや様に改めてお礼を申し上げると共に、このサイトを通じて一人でも多くの方が何らかの気づきを得る事を願ってやみません。
 
 
最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。
 

wriiten by  鳴海集一 Shuichi Narumi

 
 

鳴海様

お仕事もあり、文章を書くのもとてもエネルギーの要る作業だったにも関わらず、このように連載をお引き受け下さり、誠にありがとうございました。
 
過去のご自分のこと、お姉さまの死、ご家族の苦しみ…これらを取り出して書く、という作業は本当に、本当に、大変だったと思います。
 
期せずして、この最終回の内容が、これからシリーズでお届けする予定だったテーマそのものでしたので、これもご縁なのだなと深く思いました。
 
鳴海様のご尽力とご経験、そしてお気持ちをつないでいけますよう、これから取り組むテーマについて、少しでも皆様に届いたらと思います。
 
尚、鳴海様のペンネームは、亡きお姉さまが遺されたものだそうです。

空に咲くひとひらの花、というタイトルは、そのエピソードをお伺いした際、おそらく亡きお姉様がこのご縁を結んでくださり、鳴海様を突き動かしてくださったのではないかと感じ、空から鳴海様を見守っているお姉さまの愛という気持ちを込めてつけさせていただきました。

 
 


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