【空に咲くひとひらの花】連載第16回 子供が受け継いでしまったもの⑥ 起こした事件と進路

これまでのお話:【空に咲くひとひらの花】
 
ご自身が発達障害と向き合う若い頃の過程から、結婚後授かったお子さんの発達障害のご様子を、連載という形で記事にして下さっています。
ノンフィクションです。

 
 
(ご子息様が何度も起こしてしまった事件により、家庭裁判所へ呼び出されました。なんとそこで3月11日、東日本大震災の地震が起こります)
 
 
family court
これまで淡々と話していた調査官の方の顔色が変わりました。
私らは座ってお話を聞いていたのですが、調査官の方は立っていました。
 
不謹慎な話なのですが、まるで波の荒い海で、たる桶の上で踊っているように見えます(不思議なほど現実感のない光景でした)
 
「…一旦中断します!!」
 
叫ぶように言われ、外へ出て行かれました。
 
 
入れ替わりのように、職員の方が

「本庁舎は最新の耐震構造です、中にいた方が安全です!!」

…本当に!? とにかく職員の方の言われる通りにしました。家内の手を握り、息子の肩を掴んでいたのを覚えています。
 
 
暫くして、待合室に行くように言われました。そこでも断続的に余震がありました。

他に家族連れが2~3組いらっしゃいましたが、一様に不安そうです。
普段の地震でないことははっきりと分かりました。それを決定づけたのは、待合室にあったTVの映像です。

時刻は3時過ぎだったとおもいます。

真っ黒な津波に次々と飲み込まれる家や車。日本という国そのものが崩壊するレベルだと思いました。

ただただTVに釘づけになりました。
 
 
どのくらい時間がたったのでしょうか。
余震が収まり、待合室に待機していた人が順番に呼び出され、審判(結審)の予定日を告げられます。
 
うちの番になり、2か月後の予定であることをお知らせ頂き、解放されました。
 
 
その後間もなくして迎えた息子の卒業式。

私も家内も出席しました。
桜が舞い散る外の華やかさと電気の消えた体育館での式典。コントラストが非常に感慨深い思い出となっています。
 
 

話は2010年の10月に戻ります。
 
 
進路のことで学校から呼び出しを受けました。
息子の起こした事件で学校とやり取りは頻繁にありましたが、進路のことでは初めてです。
 
案内された応接室には学校長、副校長、学年主任、担任 の先生方が居並んでいらっしゃいました。

校長先生から告げられたのは、高校受験に際して鳴海くんに一切の推薦は学校として出せない、という事でした。

起した事件の数々から内申点は絶望的だとは思っていたのですが、推薦も頂けないとは。これで息子の受験は「一般入試」一択となりました。

当時の私の日記にはこんなことが書かれています。
 
「T(息子)の進路問題はかなり深刻なこととなった。やる気がない訳ではないのだろうが、全く行動に移せていない。受験するにあたっていくつか約束したものの恐らく守れないだろう。
やはり土日から本格的に勉強をみるしかなさそうだ。同時におれ自身真剣に高校受験対策のために情報収集をしなければならない。大切なのはあきらめないこと、見放さないこと」
 
 
息子は重度の学習障害状態にありました。加えて全く自分では机に向かおうとはしませんでした。

定期テストを含め、ありとあらゆる勉強、試験から逃げ続けたのが中学生活です。

公立のサポート校を第一志望に据えましたが、仮に運よく合格できたとしても授業や試験についていけるのか。

他の選択肢として(家内の希望もあり)寮のある独自のカリキュラムを設けている学校、通信教育制度、もしくはいっそのこと中卒で就職した方が本人のためになるのでは、とも思いました。

とにかく支援制度も含め、情報収集にあたりました。複数の学校説明会にも足を運びました。
 
 
そんな中やっと、これは、と思う学校を見つけました。

各種資格習得を目的した職業訓練校に近い専門学校です。卒業時には高校卒業資格も取得できるそうです。
 
 
息子と家内と三人で学校説明会に赴きました。

授業内容や今年三年の現役生から学校生活の説明がありました。
私自身が気に入ったのはアットホームな雰囲気と教頭先生の言われた

「当校は、生徒さんが望む限り決して見捨てることはしません」

の言葉です。
 
 
息子も家内も同様の感想を持ち、都合3回ほど学校に足を運びました。

試験は筆記と面接とのこと。恐る恐る筆記試験の程度をお伺いすると

「筆記で落ちた生徒はいない」

とのことでした。また個人面談の際に、現在家庭裁判所にて審判中であることもお伝えしました。
 
 
「裁判の結果、鑑別所に送られれば別ですが、そうじゃなければ特に問題ありません。過去はともかく入学してからのほうが大切じゃないですか」

実際、入学時に保護観察中の生徒さんもいらっしゃるそうです。この言葉には救われた思いがしました。

 
 
ともあれ何とか進路が決まり、息子の高校生活が始まりました。

裁判の結果は、5月中旬にでました。

「短期の保護観察処分」

正直、説諭で終わるかなとの期待もあったのですが、やってきたことを考えると寛大な措置です。
任命された保護司の先生のところへご挨拶に伺い、月に一度レポートをだすことになりました。

様々なことがありましたが、やっとリスタートが切れそうです。何年か振りに穏やかな生活が戻ってきました。

息子も毎日遅刻ギリギリになりながらも、学校に通い、しばらくしたらアルバイトを探すつもりだという横顔は今までにない落ち着きがあるように思えました。
 
 
ところが、この穏やかな生活は長くは続かなかったのです。
 
つづく
 
 

wriiten by  鳴海集一 Shuichi Narumi

 



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