【空に咲くひとひらの花】:連載第13回 子供が受け継いでしまったもの③

これまでのお話:【空に咲くひとひらの花】
 
 
団体や地域によって大会スケジュールは異なりますが、うちのチームは春季大会と秋季大会のトーナメントを中心に試合スケジュールが組まれていました。

春季を皮切りに、地区大会、都道府県、そして夏の少年野球の甲子園といわれ、携わる父兄や、選手が一度は夢見る「全日本学童軟式野球大会」いわゆるマクドナルド杯につながっていきます。
 
 
その他の行事としては、

・春季大会が始まる前の春合宿
・お花見
・5月のバーベキュー
・夏合宿
・秋の父兄懇親会
・卒団式
・新年会

もう目白押しです。
 
 
私を含め、お父さんコーチは、通常の練習以外、グランド整備、設営(小学校のグランドをお借りしているため毎土日、一からネットを張り、ベースを置き、ラインを引きます。練習が終わればそれを元に戻します)、用具整備、遠征試合での各自自家用車での送迎、合宿への帯同、大会抽選会の引率、月一回の運営会への出席、試合での審判、スコアつけ、他にも各種講習会への出席が義務付けられています。
 
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そんな中、息子Tが小学三年生の時、初めて親子で合宿に参加しました。
地元から車で2時間ほど、山の中です。日程は2泊3日。本当に朝から晩まで野球漬けとなります。

息子が所属するチームも、外野練習はそれぞれポジションにつかせ、コーチが手投げでフライやゴロを出します。
選手たちは自分のボールだと判断した時は「オーライ」の声をだし捕球します。

この頃になると、監督の配慮もあり、私以外の他コーチにも、息子に目を配って頂き直接指導を受けるようになっていました。
なので、私自身は少し息子と距離を置くようにしてました。

しかし選手たちの後ろで球拾いをしつつも、どうしても息子に目がいってしまいます。
 
 
息子の番です。

ゆるいフライが上がります。
息子はボールを追いかけ走り出すのですが、上を向いて走ると足元がお留守になるようで、転んでしまいました。

一斉に他のチームメイトから冷やかしの声が上がります。

どうしても「ボール勘」が鈍いようです。

他の子達は、捕球に失敗することはあっても、なんとなくボールの落下方向に予測をつけ動けるのですが、息子にはその素養があまりありません。
50球ほど左右に打ち分けるノックが続きます。空間認識能力が弱いのです。
 
 
他のコーチからは
「目を切るな(ボールから目を離すな)」
「帽子のマークにボールを合わせろ(視点を若干上目におき余裕のある捕球動作をとるため)」
等の指導が入りますが、ピンときてないようです。

このもどかしさというか、置いてけぼり感はよく分かります。

とはいえ、私自身理解していないことを教えるわけにもいきませんし、息子だけに時間を割くわけにいかずハラハラしながら見守るだけです。
 
 
見かねた古株のコーチが息子に「特守」を申し出てくれました。

短い距離でのノックです。とにかく習うより慣れろ、数で体得させようという作戦です。

「捕れなくてもいい、とにかくボールに体をもっていってごらん」

50球ほど左右に打ち分けるノックが続きます。

下手くそながらも、ボールに向かっていく気持ちはあるようです。

「よし、ラスト一球!!」

緩いフライが高く上がりました。高さはあるものの、守備位置をほとんど動かなくて済む絶妙のフライです。

右往左往してましたが、打球は小気味いい音と共にTのグローブに収まりました。

「できたなー、T!!」
「ハイっっ!!」

思わず駆け寄って頭をなでたくなるほど、よい笑顔が咲きました。
 
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息子は本当に小さな時から「周囲の良い大人たち」に恵まれてきました。
この傾向は今も続くのですが、何かにつけ手を差し伸べて可愛がってくれる大人たちがいるのです。これは息子自身が生まれ持っている財産だと思います。

ただやはりチームメイト、同級生の中では浮いた存在で、野球チームの中でこの覚えの悪さは恰好のからかいの種となりました。
 
 
初日の練習が終わり、宿舎に引き上げます。

選手と監督・コーチの部屋は別です。

本来なら、コーチは就寝前に子供達の様子を見まわりに行かなくてならないのですが、私は初の合宿参加ということもあり気を使っていただいて免除となりました。
慰労の意味を含めた食事後の宴会を終えると、早々に部屋に引き上げ爆睡です。
 
 
翌朝、朝食後にあるコーチに声をかけられました。

聞けば、そのコーチが部屋を見回っているとき、息子が部屋の外の廊下で一人泣いていた事。
時間をかけ話を聞くと、どうやら仲間外れにされて部屋から閉め出されたらしいのです。

自分の迂闊さを恥じました。息子の性格やチームの状況を考えるとありうる話です。
ここはコーチとしてではなく、父親として気を配るべきでした。

結局昨晩はコーチ達の部屋(私とは別)に泊めてもらったそうです。

それとなく息子と一緒の部屋だった子供達に話を聞くと、口を揃えて「T(息子)が悪い」と言います。

原因は「寝る場所」とのこと。

息子は小さな時から、壁に近い位置ではないと落ち着いて寝られない傾向にありました。

それで、合宿の時もいの一番に自分の寝る場所を主張したのでしょう。
ただ周囲からすると「なに、勝手に決めてんだ」と反感を買い、譲り合う術を知らなかった息子は「痛い子」扱いとなり、結果追い出されたのだと思います。

息子の気持ちとその時の状況は手に取るように理解できました。

この先、こうした損な役回りや、周囲との摩擦が続いていくのだろうと考えると切ない気持ちになりました。
私自身が歩んできた道だからです。
 
 
 
話は前後しますが、彼が2年生の後半くらいから結構深刻な学習不振を担任の先生から指摘されていました。

授業中の落ち着きのなさ、手遊び、脱走(本人いわく水を飲みにいっていただけ)。特定の教科のみが不振という訳ではなく、全般理解が足りないようです。

先生から紹介されたのは「きこえとことばの教室」です。

あまりに理解が及ばない、友達とのコミュニケーションにも難がある、という所から「きこえ」と「ことば」について何らかの障害があるのでは?と疑われたからです。
 
 
家内と一緒に面談を受け、通っている小学校とは別に月一回「通級」という形で通うことになりました。

半年ほど通ったと思います。
半年通しでの結論、「きこえ」に関しても「ことば」に関しても現認できる機能上の障害は特に認められないとのこと。

学習面での不安が残るのであれば、通える範囲で児童心理学や、児童教育に精通しているある大学の教授がいるので紹介頂けるとのことでした。

その大学へは2年ほど通ったと思います。
 
leere Kreidetafel in einem Klassenzimmer
 
ただここでも
「きちんと説明すれば理解する能力はある」
というお話でした。
実際に何回か受講シーンを見学させて頂いたのですが、時間はかかるものの、理解力そのものが不足しているようには思えませんでした。

とはいえ、相変わらず学校での学習不振は続き、野球ではうまくコミュニケーションが取れない日々が続きました。
根本に発達障害(AD/HD等)の原因があることは知識としては分かっていたのですが、当時関わった先生方の勧め、また心療内科を受診させることに若干の抵抗があったのは事実です。
 
つづく
 
 

wriiten by  鳴海集一 Shuichi Narumi

 


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